米国全世帯の総資産は2016年の第4四半期には92.8兆ドルになりました。年末の株式市場と住宅価格の高騰により、第3四半期から2兆ドルの上乗せになりました。

最も大きな貢献者は株式市場で、第4四半期だけで7,280億ドル増加しているとFRB ( Federal Reserve Board: FRB-米国連邦準備制度理事会、日本の日銀に当たる) のレポート (Quarterly Financial Accounts Report) に報告されています。

昨年の第4四半期の株式市場は、米国のトランプ新政権誕生後に8%上がっており、減税や規制緩和、公共投資への投資家達の期待の高さがうかがわれます。

 添付のチャートで示すように、2007年から2009年 (18ヶ月間) のリセッションの時期に、米国はおおよそ13兆ドルの資産を失っています。2009年の第1四半期からはボトム時期(景気の底)を抜け出して右肩上がりへと回復し、現在までに全体で38兆ドルほど資産が増えて挽回しています。大きく貢献したのは、この8年間に上下運動を繰り返しながら回復してきた株式市場と、2012年以降に回復した不動産市場です。

 不動産市場も今期の資産の増加に大きく貢献しています。米国の住宅資産は5,570億ドル増加しており、全体では26.5兆ドルまで膨れ上がり、バブル期のピーク時よりも1.6兆ドルも増加しています。

 一般的には、住宅価格が上昇してエクイティ(含み益)が増えると、米国では消費へと向かう傾向、いわゆる「富裕現象 (wealth effect)」になっていましたが、現在はバブル期よりもおとなしくなっているようです。

 レポートには、米国の家庭でどのように資産が増えていったのかについての分析はありません。通常、株式市場は資金に余裕のある富裕層を中心に動き、また、大きな資産価値のある不動産は東海岸や西海岸に集中しています。ところが、全米の住宅価格の上昇は、住宅を所有する多くの家庭のエクイティの増加を示しており、それが中産階級の資産向上に寄与しているのです。

 家庭の純資産と個人収入の比率もバブル期の比率を超えており、現在の家庭の純資産は収入より6.5倍も高い最高値を示しています。この資産の上昇は直近の5年間に起きており、個人収入の増加より株式や不動産価値の上昇が大きく上回っていることから生じています。

<Source: The Wall Street Journal, March 9, 2017>