イギリスの欧州連合(EU:European Union)からの離脱は、長期的には世界経済への影響は必至ですが、短期的には海外の多くの投資家が米国の不動産に流れ込んでいる影響からドル高基調となり、ローン利率を押し下げる役割を果たすのではないかと思われます。
全米リアルター協会(NAR)のチーフエコノミストのDr.ローレンス・ユン氏(Dr.Lawrence Yun)は、「米国の不動産価値は上がるだろう。特に商業/投資の分野では、イギリスに基盤を置き続けることの不透明感が増し、その反動としてアメリカに基盤を移すことになるだろう。特にロンドンは、EUからの離脱により欧州の金融市場の中心地としての魅力を失うことは間違いない」と述べています。
ドル高はアメリカの輸出に影響しますが、長期金利を抑制する側面もあります。バンクレイトドットコム(Bankrate.com)のチーフファイナンシャル・アナリストであるグレッグ・マックブライド(Greg McBride)は、「住宅ローン金利は下がるだろうし、最低金利率を記録するかもしれない。そのときは、ローンを申し込む人やリファイナンスを希望する人はこのチャンスを逃すべきではない。このようなチャンスは長くは続かないから」と述べています。
ファニー メイ(Fannie Mae:米連邦住宅抵当公社)のチーフエコノミストのダッグ・ダンカン(Doug Duncan)氏は、世界経済の先行きに対しての不透明感から低金利はしばらく続くとして、「今後、連邦準備制度理事会(FRB:Federal Reserve Board or the Fed)としては、米国だけでなく世界規模での金融機関の状況を把握する必要性から、低金利を継続せざるを得ないだろう」と述べています。
歴史的に最も低い米国の金利が、この先さらに下がることになれば、米国の住宅不動産を含んだあらゆる分野の販売を押し上げることになります。海外の投資家でロンドンを見ていた人々の目も、米国へ向く可能性が大きくなることは間違いありません。前述のユン氏は、「常にアメリカへの住宅投資のトップ5だった英国の投資家は、イギリス経済の混乱で米国への投資を制限あるいは所有物件を売却する可能性が大きい」としています。
クナ・ミューチュアル・グループ(CUNA Mutual Group)のチーフエコノミストであるスティーブ・リック(Steve Rick)氏は、「住宅金利の低下は、住宅ローンを取得しているホームオーナー(持ち主)にとってはまたとないリファイナンスの時期になるであろう」と述べ、ミニ・リファイナンスブームが起こるのではないかと予想しています。
いずれにせよ、長い目で見れば、離脱による不透明感が世界経済の動きを弱め、雇用の消失(失業)、減収、あるいは消費意欲を減退させることになります。米国の不動産にとっては短期的にはプラスになるかもしれませんが、長期的にはマイナス要因にもなり得ます。
<Source: REALTOR Magazine >