ここ数年、海外からの住宅不動産投資は、中国からの投資が金額的に一番大きいことが知られています。全米リアルター協会 (NAR) によると、その総額は、2016年4月から2017年3月までの1年間で317億ドルとなっています。しかし、2017年8月から、中国政府は個人や法人の海外への資金の持ち出しにさらなる制限を設け始めており、米国内のマーケットによっては、その影響をもろに受けている地域も出てきています。NARの統計では、香港、台湾などからの投資も、統計上は中国となっています。
米国への中国からの投資は減少傾向にありますが、そのギャップを埋めているのが新興国です。台湾、ベトナムやタイなどの東南アジア諸国、クウェート、アラブ首長国連邦などの中近東、トルコや旧ソビエト連邦などで、最近では中央アジアにあるジョージアなどがそうです。
これは米国の不動産市場が、世界で最も安定的で安全な、開かれているマーケットであることを如実に示しています。2017年の海外からの住宅不動産への投資は、全米の既存住宅市場の4.5%(米国に居住する永住権保持者を含めると約10%)を占めています。経済が安定しているだけでなく、政治的にも安心、マーケットは透明性があり、人口も毎年増加傾向にあるアメリカ。1980年代には日本からの不動産投資が最も多く、現在は中国と、トップランナーが入れ替わっても次から次へとその穴を埋めるが如く、世界中の国々が投資をしています。ちなみに、2017年の日本から米国への投資額は、全体の2%を占めるに至っています。
米国内の主要都市を見てみると、ロサンゼルスでは、ビバリーヒルズで開発されている59ユニットのフォーシーズンズ・プライベートレジデンス (Four Seasons Private Residence) プロジェクトの約70%が海外からの投資で占められており、特に、シンガポールを中心とした東南アジア諸国の比率が増えています。
今年に入って、ニューヨークでは、ロサンゼルスと同様にアジア系のバイヤーが例年よりも多く見られます。特に、マンハッタンのハイエンドの物件内覧では30〜35%が、購入に際しては全体の10〜15%がアジア系です。7〜8年前に、主にタウンハウスを購入していたロシアや東ヨーロッパ諸国のバイヤーが今は見られず、代わりに台湾や韓国からのバイヤーが見られます。
米国本土の南東部に位置するマイアミでは、中国を始めとするアジアのバイヤーの数はそれほどではありません。その大きな理由としては、中国やアジアからの直行便がないためだと地元では推測しています。マイアミは地政学上、以前からラテンアメリカやカリビアン諸国のバイヤーの影響を強く受けています。
ロサンゼルスにおける中国人バイヤーの影響力の低下が著しいだけでなく、マイアミでも南米のベネズエラやアルゼンチンからのバイヤーが、自国の経済の低迷などで資金の持ち出しが容易にできなくなり、姿を消しています。
最近の傾向としては、マイアミではコロンビア、ペルー、メキシコやチリからの投資が増えており、中南米諸国からのバイヤーが、新規のプロジェクトなどでも半分近くを購入するなど、その存在感を示しています。さらに、ヨーロッパ諸国やカナダなども新規のビーチプロジェクトへ多くの投資をしており、これらはセキュリティー(安全性)というよりも、自分たちのライフスタイルに合わせた物件購入といえます。
最近の海外からのバイヤーの動きも、一昔前から比べると変化しています。その投資先は全米に広がっているだけでなく、地域内においても、新規プロジェクトだけでなくダウンタウンや郊外などへと、多岐にわたっています。
特に、ラグジュアリー・マーケットにおける海外からの投資は、年々その比重を増しており、地政学的な面での政治の不安定さや安全面から、子供に米国での高等教育を受けさせる比率も高まっているなど、今後も米国への住宅不動産投資は増え続けていくでしょう。
<Source: MANSION GLOBAL, Realtor.Mag>